外資系キャリアウーマン駐在員の日常

貪欲な三大欲求を持つアラサーの頭の中を吐き出す雑記。アメリカの地方都市で駐在員しています。

あなたはいいよね、という言葉にイラっとする

日本で働いているときに、「あなたはなんでもできるから」とか「それはあなただから言えるんだよ」と言われることがたまにあった。特に職場で言われることが多く、「あなたはそうやって上の人にも意見が言えるけど、できない人だっているから配慮すべき」とか「私はあなたのような働き方はできない」とか、そういった内容だった。
アメリカに移ってからも日本の同僚から、「あなたは英語ができるから」とか「あなたは強くて適応能力が高いから」とかそんな具合のことを言われる。

私は自分がいかに努力したかを誰かにアピールしたり、つらいアピールをすることがあまりない。それにあまり意味を感じないし、できるかぎり色々なことにおいて楽しい面やポジティブな面を考えたいから。ただ、その結果、私のことを、生まれ持った要領の良さと頭の良さで苦労せずに良いポジションを得ている人、と思っている人がそこそこにいるんだろう。

確かに私は要領はそこそこに良いと思う。ただ、じゃあ何も苦労せずに生きてきたかというと全くそうではない。例えばアメリカに移りたての時、私はわりと英語ができるほうだと思っていたし、周りからもそう言われていたけれど、5~6人でランチをしたとき彼らの英語が全く聞き取れなかった。そのまま、できないできない、と思っていても仕方がないので、毎日彼らとランチし、週末も一緒に飲みに行き、車通勤中は日本の音楽をやめて現地のラジオにして、スーパーやバーでも店員さんと話すようにした。聞き取れなかった場合は、分からないからもう一回言って、と聞き返して、理解できなかったことをうやむやにしないようにした。
仕事だってそうだ。最初から何でもできたわけじゃない。むしろ記憶しておくことが苦手なので、入社したてはよく分からない返答をしていたと思う。でも、文字通り人の2倍働いて、早く1人で働けるように努力した。いつも「この人を超える」という人を設定して、その人と自分のどこに差があるのかよく考えて、その差を埋めていった。どれだけ上司に詰められても、諦めずに食いついていた。その結果、3人分の仕事を1人でできるようになり、そういった私の努力を見てる人は見ていて、私のサポーターになってくれる人が増えていった。このクソ野郎といつも思いながら一緒に働いていた人も数人いたけれど、結果的に今では全員が私の保護者のような存在になっている。

これだけ話すと、でもそれに耐えられるのはあたなが強いからだよ、とか言われると思う。ただそういうわけでもない。一時期は会社にいる間ずっと頭痛がして、帰宅してからもお酒を飲まないとうまく寝れなかった。ずっと何かに追われている気がしていたし、精神的にギリギリのところにいたと思う。でも、それを表に出すのは私の主義に反していたから、わりとへらへらしていたし、なんなら今ちょっと時間あるから他の人の仕事手伝えるよ、なんて言っていた。私が精神的にギリギリだったことに気づいていた人なんて、おそらくいなかった。

私には、頭が良くて仕事のできる友人がたくさんいる。私自身が、あなたはいいよねって言ってしまいそうなくらい優秀な人達だ。ただ、誰に聞いても私が上で書いたようなことを言われる。
1人の友人は「あなたは語学の才能があるから、って言われることがあるけど、そんな才能なんてない。語学習得はとにかく勉強するしかないし、辛くても、その言語を話す環境に自分を置かないといけない。コツがあるなら私のほうが知りたい。」と話していた。この友人は、今はヨーロッパで働いていて、その国の言語で仕事をしている。
別の友人は「くそみたいな職場だから辞めたくて、働きながら米国公認会計士取って、アメリカに移ったんだよ。」とまわりに気楽に言うけれど、前職で平日は夜中まで、週末だって働き詰めだったのに、その合間に勉強していたし、海外で職を得るために英語も努力してお金も投じていたことを私は知っている。

1人の女性の言葉は、私のいつも感じる違和感やイラっと感を適切に表現していた。彼女が言っていたのは、「あなたはいいよね、って言われると本当に腹が立つし、その時点でその相手を嫌いになるし、無能と判断する。彼らは私がどれだけ努力しているか想像もせずに、自分の保身のためにそういったことを言っている。」という言葉だった。
まさしくそれが私の気持ちで、他の人の保身やできないことの理由として自分を使われることに腹が立つのだ。
ただ彼女も私も、その気持ちを「あなたはいいよね」と言ってきた人に伝えることはない。